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多汗症とは
多汗症とは、身体の必要以上に汗をかく状態を指します。通常、汗は体温調節を目的として分泌されますが、多汗症の場合、発汗が過剰であり、日常生活に支障をきたすことがあります。多汗症は大きく分けて、「原発性多汗症」と「二次性多汗症」の2種類に分類されます。
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原発性多汗症:特に他の病気が原因ではなく、遺伝的要因や自律神経の過剰な反応によって引き起こされる多汗症です。手のひら、足の裏、脇の下など、限られた部分に多汗が現れることが多いです。
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二次性多汗症:別の病気(例:糖尿病、甲状腺疾患、感染症など)が原因で発汗が過剰になるタイプです。この場合、全身的に発汗が見られることが多く、病気が改善することで発汗も軽減します。
検査
全身性の多汗症の場合、まずは二次性多汗症の可能性がないか採血検査などを行うことをお勧めしております。
何か原因となりうる病態があった場合は、その疾患の治療に適した病院にご紹介させていただきます。
特に原因となる病態がなく、原発性多汗症であると判断した場合、当院で治療させていただきます。
治療
~保険治療~
外用療法
多汗症の症状が気になる場合には、外用薬を使って治療を行うことがあります。
脇の多汗症、手の多汗症に関しては保険適応のお薬があります。
原発性腋窩多汗症(脇の多汗症)の場合
・エクロックゲル
脇に直接塗るタイプのお薬です。汗を出す指示に関わるアセチルコリンという物質を止める機序を持つ外用薬で、1日1回朝に脇に塗ります。塗るタイプの制汗剤と似ている作りをしています。保険適応で、3割負担の方で1本1,460円(約2週間分)です。
・ラピフォートワイプ
脇を拭いて使うタイプのお薬です。汗を出す指示に関わるアセチルコリンという物質を止める機序を持つ外用薬で、1日1回朝に脇を拭いて外用します。使い捨てのタイプなので旅行などにも持っていきやすいです。3割負担の方で1枚あたり約79円なので、2週間分で約1,100円程度です。
どちらも脇にしか適応がないため、他の部位には使用できません。
原発性手掌多汗症(手のひらの多汗症)の場合
・アポハイドローション
プッシュ型の液状で、手に出して塗り広げるお薬です。汗を出す指示に関わるアセチルコリンという物質を止める機序を持つ外用薬で、1日1回寝る前に手に外用します。そのまま寝て、朝起きたら洗い流す必要があります。3割負担の方で1本707円(約1週間分)です。
こちらは手のひらにしか適応がないので、足や脇など、その他の部位には使用できません。
いずれの外用薬も接触皮膚炎(かぶれ)を起こす可能性があるので、使っていてかゆみがでたり異常がでたりした場合は中止してご相談ください。
内服治療
内服薬としては、抗コリン薬や漢方などが使用されることがあります。
抗コリン薬は、神経伝達を抑制し、汗腺の活動を抑える作用があります。ただし、乾燥や便秘などの副作用があったり、長期内服による認知症のリスクなども報告があるため、医師の指導のもとで使用することが重要です。
漢方は白虎加人参湯や防己黄耆湯、加味逍遙散などを用いることが多いです。冷えやすいかのぼせやすいかなどの体質により、適している漢方が変わってきますので相談の上で処方を行います。漢方の場合は効果が出てくるまで数週間かかりますので、気長に症状と向き合っていくことが必要です。
~自費治療~
外用療法
主に「制汗剤」が使われ、これには以下のような種類があります。
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塩化アルミニウムを含む制汗剤:塩化アルミニウムは汗腺を閉じる作用があり、過剰な発汗を抑える効果があります。脇の下や手足、顔面など様々な部位に使用できますが、かぶれる方もいるので、少しずつ試してから使うことがお勧めです。基本的に1日1回の外用ですが、2~3週間続けて汗が減ってきたら頻度を減らしていくことも可能です。
当院では30ml 770円、100ml 1320円で販売をしております。(部位によりますが、両手サイズに1回1ml程度使用)
ボトックス注射
ボトックス注射は、過剰に発汗する部分にボトックスを注入することで、エクリン汗腺を一時的に不活性化させる治療法です。
特に脇の下や手のひら、足の裏などに有効とされています。
ボトックス注射の効果は4~6ヶ月程度持続しますが、定期的な治療が必要です。副作用としては、注射部位の軽い痛みや腫れがある場合がありますが、一般的には安全な治療法とされています。
当院でも行っております。
脇:55,000円(50単位)、88,000円(100単位)
半年以内のリピートはそれぞれ11,000円引きで受けていただけます。
手のひら、足の裏にも同料金で施行可能ですが、痛みの強い部位となるため事前に十分なカウンセリングをした上で行います。
外科的治療
外科的治療としては、「交感神経切除術」があります。この手術は、過剰な発汗を引き起こしている交感神経の一部を切除または遮断する方法です。手術によって汗腺への信号を遮断し、発汗を抑制することができます。
この治療は、通常、重度の多汗症に対して行われ、効果が高い反面、手術に伴うリスクや費用がかかるため、慎重に検討する必要があります。なお、当院では行っておりません。
予防と日常ケア
多汗症の軽度のケースでは、生活習慣を改善することが効果的です。以下の方法を試みることで、発汗を抑制できる場合があります。
- 適切な服装:湿気を吸収しやすい素材の衣服を避け、通気性が良く、吸湿性の高い素材の衣類を選ぶと快適です。
- ストレス管理:過度のストレスや緊張が発汗を引き起こすことがあるため、リラクゼーション法や深呼吸などでストレスを軽減することが有効です。
- 食事の管理:カフェインやアルコールの摂取を減らすことで、発汗を抑える効果が期待できます。
- 汗拭き用具の準備:日常的に汗をかく部位に対して、タオルや汗拭きシートを常備しておくと便利です。
医療機関を受診すべきケース
多汗症の症状が日常生活に大きな影響を与える場合や、過度の発汗が全身に及んでいる場合は、専門的な治療が必要です。また、以下のような場合には医師に相談しましょう。
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発汗が突然始まった、または急に悪化した
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発汗が全身に広がり、生活に支障をきたしている
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体調不良や他の病気の症状を伴っている(例:発熱、体重減少)
これらの症状が見られる場合、内科的な問題やホルモン異常などが原因となることもありますので、早めに診断を受けることが重要です。