円形脱毛症(えんけいだつもうしょう)とは
円形脱毛症は、突然髪の毛が抜けてしまう自己免疫性の病気です。1か所だけ脱毛する場合もあれば、複数箇所にわたって脱毛する場合もあります。まれに頭髪全体や眉毛、まつ毛、体毛にまで広がることもあります。
年齢や性別を問わず発症し、子どもから大人まで誰にでも起こる可能性があります。なかなか治りづらいこともありますし、再発することもありますが、治療により改善が期待できる病気です。
原因
はっきりとした原因は解明されていませんが、自己免疫の異常が関与していると考えられています。体の免疫が誤って自分の毛根を攻撃してしまうことで、毛が抜けてしまうのです。
発症のきっかけとしては以下のような要因が挙げられます。
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ストレス(精神的・身体的)
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遺伝的な素因
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アレルギー体質(アトピー性皮膚炎など)
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自己免疫疾患(甲状腺疾患、膠原病など)
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ウイルス感染や環境の変化
- 亜鉛や鉄などの欠乏
症状
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頭部などに突然、はげた部分が出現します
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痛みやかゆみなどの自覚症状はほとんどありません
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軽症の場合は1~2か所の脱毛で済みますが、以下のようなタイプもあります
主なタイプ
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単発型:1か所だけ脱毛
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多発型:複数か所に脱毛
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全頭型:頭髪がすべて抜ける
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汎発型:眉毛・まつ毛・体毛など全身の毛が抜ける
診断
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視診によって円形の脱毛斑の確認を行います。
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ダーモスコピーで毛根の状態を観察します。
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必要に応じて血液検査(甲状腺機能、自身免疫疾患の有無)を行います。
治療
症状の程度や範囲、年齢によって治療法が異なります。
外用治療(塗り薬)
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ステロイド外用薬:自己免疫の機能をおさえ、発毛を促します。
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カルプロニウム外用液:血流をよくすることで発毛を促します。
内服治療(飲み薬)
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抗アレルギー薬:アレルギー体質がある場合に併用されることもあります。
- ステロイド内服薬:重症例や急速に進行する場合に用いることがあります。
- JAK阻害薬:自己免疫を強くおさえることにより、発毛を促します。副作用がでることもあるので、導入前や導入後に定期的に採血・胸のX線などの検査が必要です。
その他の治療法
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紫外線療法(エキシマライト):皮膚に紫外線を当てて自己免疫をおさえ、発毛を促します。
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注射療法(ステロイド局所注射):小さな脱毛斑に直接ステロイドを注射し、発毛を促します。
- スロイドパルス療法:汎発性脱毛や全頭型脱毛の方の進行をおさえるため、高用量のステロイド点滴を3日間連続で行います。入院での治療となるため専門の施設へのご紹介が必要となります。
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局所免疫療法(SADBEやDPCP):脱毛部にわざと軽いかぶれを起こし、発毛を促します。(当院では実施しておりません)
日常生活での注意点
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病気の進行に精神的ストレスが関与していることがあるため、できるだけ穏やかに過ごすことが大切です。
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シャンプーや整髪料などでの過度な刺激は避けましょう。
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食事・睡眠など生活習慣を整えることで、治療の効果が出やすくなります。
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他人にうつる病気ではありません。
医療機関を受診すべきタイミング
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髪が円形に抜けているのを見つけたとき
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数か所以上に脱毛が広がっている
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脱毛の進行が早い、再発を繰り返している
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眉毛やまつ毛、体毛にも脱毛がみられる
まとめ
円形脱毛症は誰にでも起こりうる自己免疫の病気で、ストレスなども発症の引き金になることがあります。軽症であれば自然に治る場合もありますが、早めに受診し、適切な治療を続けることで再発や重症化を防ぐことができます。症状や不安な点があれば、お気軽にご相談ください。